こんにちは、アスナロです。
わたしは会社を定年退職した60代男性で、現在第二の人生を楽しんでいます。
わたしぐらいの年齢になると人生経験も少しは豊富になり、みなさまの参考になる情報を提供できるかもしれません。
つたない文章でまことに恐縮ですが、年甲斐もなくブログをやっています。
昭和48年8月陸羽西線・奥羽本線・米坂線を迂回して走った『急行きたぐに号』
みなさまは、青森から大阪まで日本海に沿って走る『急行きたぐに号』に乗ったことはあるでしょうか？
アスナロは、昭和48年（1973年）8月山形県の酒田駅から終点大阪駅まで『急行きたぐに号』に乗ったことがあります。
（参考）1975年の時刻表では『急行きたぐに号』の時刻は次のようになっています。
青森 12：58発
酒田 17：53発
新潟 20：55着 （寝台車連結）
新潟 21：20発
大阪 8：27着
大阪行き『急行きたぐに号』は新潟駅で寝台車を連結します。
アスナロは、新潟駅から大阪駅までの寝台券を持っていました。
酒田駅から新潟駅までは自由席だったのですが、仮に満員でも停車駅の多い急行ですからそのうちに座席も空くだろうと安易に考えていたのです。
事件発生～土砂崩れのため羽越本線が不通に！
ところが事件発生です。
当日、山形県と新潟県の県境付近で集中豪雨による土砂崩れが発生し、羽越本線は不通になってしまいます。
大変なことになりました。
定刻からやや遅れて、18時過ぎに酒田駅に到着した『急行きたぐに号』は、このまま羽越本線で新潟方面に向かうことはできません。
盆明けとはいえ、夏休み中の車内は満員です。
駅のアナウンスがあります。
『羽越本線一部区間不通のため、大阪行き『急行きたぐに号』は、余目から陸羽西線に入り新庄経由、そこから奥羽本線に入り米沢経由、そして米坂線で坂町経由、坂町からは本来のルート（羽越本線）でまいります。迂回して行きますので、かなり時間がかかることをご了承願います。』
アスナロ「えぇ～っ！」
ヨメ「オーマイガー！」
旧型客車の車内は満員です。
新潟からの寝台券は持っていますが、新潟までは自由席です。
『急行きたぐに号』は酒田以北から新潟方面に向かう乗客ばかりですから、迂回ルートの途中で座席が空くことはまず考えられません。
ということは、酒田→新庄→山形→米沢→新潟という気の遠くなるような迂回ルートを立ちっぱなしで行くということです。
アスナロは、これから始まる修行のような旅を想像して、気を失いかけるほどのショックを受けたのでした。
酒田駅発車～修行の旅始まる！
さあ、それでは時空を超えて、みなさまとご一緒に『急行きたぐに号』大迂回ルートの旅をはじめましょう！
『お待たせいたしました。『急行きたぐに号』大阪行発車します。次は新庄に臨時停車します。』
夕闇迫る酒田駅をゆっくり走り始める『急行きたぐに号』です。
…
ガタン、ガタン、ガタン～。
どれだけ走ったのでしょうか？走っても走っても、同じようなところが続きます。
完全に日が暮れて外はほとんど何も見えなくなりました。修行を行うために走っているような感覚になってきます。
この修行はいつ終わるのか、まったく見当がつきません。
遠くにボツんと灯りがたまに見えるだけの山形の暗い世界を、規則的な走行音でひたすら走る『急行きたぐに号』です。
アスナロもみなさまもみんな、旧型客車の薄暗い通路で立ちっぱなしです。
速度はあまり速くなく、遠くの灯りがゆっくり右から左に動いていきます。
何時間も立ち続けていて、足が棒のようになってきました。
目の前の座席に座っている人が見かねて「代わりましょうか？」と言ってくれます。
その方もおそらく疲れていると思ったので、丁重にお断りします。
あまりにも足がつらいので、時折通路にしゃがんだら少しだけ足のだるさがましになります。
立ったままうつらうつらして、何度もハッと目が覚めます。
う～っ！
ヨメ「辛いです。」
アスナロ「修行です！」
新潟駅到着～人生で最もきつい7時間やっと終わる
『にいがた～、にいがた～、新潟～。遅れております『急行きたぐに号』大阪行です。』
一体何時間我慢したのでしょうか？
やっと、本当にやっと、新潟駅に到着しました！
時刻は午前1時を過ぎています。
酒田駅を出発したのは、昨夕18時頃だったので、少なくとも7時間はかかっています。満員の車内でずっと立ちっぱなし。
人生で最もきつい7時間となりました。
アスナロとみなさまは、重い足を引きずりながら新潟駅のホームに降り立ちます。
久しぶりに外の新鮮な空気を吸って、少し生き返ったような気がします。
寝台車との連結作業を目の前で見たアスナロたちは、ドアが開くと飛び乗り、すぐにベッドに横になってむさぼるように眠ります。寝返りも打てないほど疲れ切っていたのです。
…
気がつくと朝になっています。
車掌がベッドを片付けに来ましたが、あまりの疲れで起きられないアスナロたち。
見かねた車掌が「昨日は遅かったのでもう少しいいですよ。また後から来ますね。」と言ってくれました。
アスナロの長い人生で、5本の指に入るほどありがたい言葉でした。
その後も『急行きたぐに号』は規則正しい音で軽快に走ります。
結局、終点大阪に着いたのは午後もかなり遅い時間になっていました。
ふ～っ！
ヨメ「お疲れさま～。」
アスナロ「体力の限界です～。」
最後に
みなさま、『急行きたぐに号』大迂回ルートの旅はいかがでしたか？
アスナロにとっては、最初で最後の『急行きたぐに号』の旅となりました。
非常に過酷な旅でしたが、本来絶対に通らない陸羽西線、奥羽本線、米坂線を『急行きたぐに号』で走った体験は、長い鉄道ファン歴のアスナロにとって、半世紀ほど経った今でも忘れられないものとなっています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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